長年の経験で培った技術や知識をもつシニア人材は、技術力がものをいう建設業界に必要な存在です。しかし、シニア人材を雇用するにあたり、さまざまな課題を抱えていることも事実です。シニア人材が少しでも長く活躍できるよう、建設業界ではさまざまな取り組みを行なっています。今回は、建設業界でシニア人材が必要とされる理由と今後の課題、シニア人材の活躍を支える取り組みについて解説します。
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■建設業界でシニア人材が必要な理由
建設業界でシニア人材が必要とされるのは、以下の事情が関係しています。
◇建設業界における技能者の年齢層
平成29年度の時点で、建設業の技能者のうち、約1/4が65歳以上のシニア世代です。10代~20代の技能者は全体の1割と極端に少ないこともあり、必然的に技能者の年齢層が高くなります。
建設業界で若手技能者が定着しないのは、建設業界を辞めた一番の理由に原因が隠されています。若手技能者が建設業界を辞めた理由は、以下のものが挙げられます。
・同世代技能者の職業意識が低い
・作業がきつい
・休みが取りづらい
・労働に対して賃金が低い
・人間関係が難しい
肉体労働という大変さと待遇面に加え、若手世代の技能教育の低さも原因のようです。シニア人材が活躍できる取り組みに加え、週休2日制の導入、技能教育の推進、賃金の改善も、建設業界が抱える課題のひとつといえるでしょう。
◇シニア人材の知識が不可欠
建設業界は他業種と異なり、シニア層の求人が減っていない傾向があります。その理由に、建設会社経営者のおよそ9割は、シニア世代のベテランに仕事を任せたいと考えているためです。
ベテランとして長年培った技術、知識、資格が企業にとって即戦力になると評価しているようです。建設業での仕事は技術がものをいうため、「年齢は関係ない」と考える経営者も多い傾向にあります。
さらに、シニア世代が現場にいることの安心感、若手世代へのアドバイス、安全を守ったうえでの作業効率化など、シニア世代に求められる役割は多岐にわたります。特に、若手世代の育成を目的にシニア人材を雇用したい、という企業が多いようです。
■建設業界におけるシニア人材の課題
建設業界に欠かせないシニア人材ですが、雇用するうえで以下のような課題を抱えています。
◇若手世代への技術の承継
65歳以上は団塊世代のため、2025年までに大量離職が見込まれています。高齢者の技能者がもつ技術や知識を若手世代へと承継する必要がある一方、若手の入職者が少ないという課題があります。
先に述べたように、若手入職者が定着しない大きな要因は、給与や休日などの待遇面です。シニア人材を再雇用したとしても、働ける年数に限りがあります。シニア人材の知識や技術を最大限に活用するためには、建設業界全体で待遇面の改善に取り組まなければなりません。
◇再雇用による待遇差
定年後の再就職では、「定年後も仕事内容が変わらない」というケースが多くを占めています。しかし、再雇用された場合、給与は定年前から3割~4割ほど引き下げられることが一般的です。
仕事内容が同じにも関わらず待遇が下がるため、仕事へのモチベーションが低下することも再雇用の課題です。また、再雇用により役職から外れることも、モチベーション低下につながります。
◇加齢による心身機能の変化と労働災害
シニア人材を取り巻く課題は、加齢による心身機能の変化と、それに起因する労働災害が挙げられます。本人は機能の変化を自覚しておらず、無理な行動で事故につながることも少なくありません。
特に、労働災害による死亡事故は、建設業で最も多く発生しています。令和2年においては、55歳以上の死傷者災害が全体の34.3%、そのうち60歳以上は25.1%です。シニア人材は労働災害の危険性が高いため、作業内容などを工夫して労働災害防止に努める必要があります。
■建設業界でシニア人材を活用する取り組み
建設業界でシニア人材が活躍でき、さらに知識や経験を最大限に活用するための取り組みについて紹介します。
◇高齢者に配慮した作業と環境整備
先に述べたように、シニア人材は加齢による心身機能の変化は避けられません。業務上の怪我や労働災害防止のため、特性に合った作業管理が求められます。
シニア世代は瞬発反応や跳躍反応が低下し、体のバランスが取りにくくなります。転落や墜落事故が起きやすくなるため、手すりの整備や段差の注意表示、明るさの確保、現場の整理整頓、始業前の体操といった対策が必要です。さらに、重いものは扱わない、無理な作業姿勢の作業を避ける、労働時間を適正にするなど、体に負担がかかるような働き方も見直しましょう。
また、健康を保持するため、定期健康診断を実施して医師の意見を聞くことも必要です。診断に応じて健康指導を行ない、心身ともに健康な状態を保つようにしましょう。
◇定年の年齢を延長する
大手ゼネコンでは、定年を60歳から65歳に引き上げる動きが始まっています。65歳まで正社員で雇用するケースが多く、当然ながら人件費の負担が増加します。しかし、若手世代への技術継承を目的としており、人件費をかけてでも雇用する価値があると考えているようです。
また、定年後再雇用後も同一労働同一賃金の対象です。同一労働同一賃金とは、正規雇用と非正規雇用の待遇差を解消する取り組みのことです。待遇の引き下げには合理的な待遇差であること、さらに労使の合意が必要になります。
2021年4月より、同一労働同一賃金は中小企業も対象になりました。大手ゼネコンに限らず、今後は60歳を超えても以前と同条件で働ける環境になる可能性が高いでしょう。
■まとめ
建設業界は他業種と比べ、シニア世代の求人が多い傾向にあります。若手技能者が定着しないという課題を抱えているため、シニア人材の技術が不可欠な状況です。しかし、加齢により心身機能が低下し、労働災害が発生しやすいことも課題に挙げられます。シニア人材を雇用するうえで、労働災害を防ぐ労働環境の整備、定期健康診断の実施などの取り組みが必要です。また、大手ゼネコンは定年を65歳に延長する動きがあり、さらに同一労働同一賃金も定年後再雇用に適用されます。今後は65歳まで以前と同じ条件で働ける可能性が高いため、長年培った技術をもとに今後も活躍できるでしょう。
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