積算業務とは、建設工事にかかる費用を事前に算出する仕事です。数千万~億単位の金額が動く建設業において、積算業務は重要な役割を果たします。しかし、積算は建設業界の独自の仕事のため、積算業務がどのような仕事なのかイメージしにくいかもしれません。今回は、積算業務の具体的な仕事内容とやりがい、必要な資格とスキルについて解説します。
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そもそも積算とは?具体的な業務内容
積算とは、建設工事に必要な費用を算出する業務です。設計図や仕様書をもとに、資材や人件費、工期などを算出し、工事全体のコストを正確に見積もります。概算業務は大きく以下の3種類に分けられます。
人材や材料費、工事費の算出
工事に必要な材料費、人件費、仮設費、その他の経費をもとに、総合的な工事費を算出する業務です。材料費の積算では、設計図書や仕様書をもとに必要な資材を洗い出し、数量を割り出します。
人件費については、職種ごとの単価や稼働日数などをもとに、現場に必要な作業員の人件費を計算します。また、仮設工事にかかる費用や電気・水道などの間接経費を含め、現場にかかるすべてのコストを見積もることも積算業務の一部です。
金額の設定
ここでいう「金額の設定」とは、建設工事によって得る利益を見込んだ最終的な金額を決定することです。材料費や人件費などの実費に加え、必要な利益を加算して全体の金額を調整します。
積算担当者が予算と原価のバランスを見ながら金額を設定することで、確実な利益を見込んだ提案が可能になります。経営面においても重要な工程です。
価格交渉
積算担当者は、資材を扱う業者や設備工事を請け負う業者と直接価格交渉を行うこともあります。単価をできるだけ抑えながらも、品質や納期を守る必要があるため、交渉には知識とコミュニケーション力が求められます。
お互いにとって利益が確保できる形で着地させることが、積算業務における大切な役割のひとつです。
積算業務の1日の流れ
実際に積算業務に携わると、どのような1日を過ごすのでしょうか。ここでは、積算担当者の1日のスケジュール例をもとに、仕事内容の流れを具体的にご紹介します。
- 8時:出社|事務所の清掃や当日の業務内容を確認
- 8時10分:朝会議|今日の仕事内容や予定、昨日の進捗状況や確認事項を報告
- ~12時:日常業務|各業者からのメール対応、稼働中の現場の打ち合わせ、設計業務など
- 13~17時:積算業務|稼働中の物件や、入札期限前の積算業務(メーカーの説明会や勉強会に行くこともあり)
- 17~18時:まとめ|メール対応、日報の記入、入札案件チェックなど
このように、積算業務は計算だけでなく、現場との打ち合わせやメール対応も業務に含まれます。
積算は激務って本当?
積算業務は定時で退社できることが一般的ですが、状況によっては激務になります。抱えている案件の数が多いときや年度末の繁忙期などは、残業や休日出勤で対応することもあるようです。
ただし、建設業界における4つの改革の推進で、業務時間が短くなっていることに加え、現場によって忙しさが異なります。激務になったとしても一時期のことなので、積算業務はワークライフバランスが整っているといえるでしょう。
積算業務のやりがいや魅力的なところ
積算業務のやりがいや、仕事を通じて魅力的に感じられる点には、以下のようなものがあります。
費用を抑え、利益を最大化する面白さ
積算業務の大きな魅力の一つは、工事費用をいかに抑えながら、利益を確保するかを考えるプロセスにあります。施主の要望を尊重しつつ、必要・不要を明確にし、無駄なコストを削減することで、限られた予算の中で最大限の成果を出すことが求められます。
その分、細かい積算を通じて無駄を省き、利益を生み出せたときには大きな達成感が得られるでしょう。
会社経営を支える重要なポジション
積算の精度は、工事を受注できるかどうかの判断材料となり、企業の経営に直結する重要な役割を担います。積算結果が適切であればあるほど、受注後の利益確保につながり、会社の信頼や存続にも関わってきます。
また、一つのミスが数百万円単位の損失につながる可能性もあるため、責任は重いですが、その分やりがいも大きい仕事です。困難な業務をやり遂げたときの達成感は、積算ならではの魅力といえるでしょう。
歴史に残るような建物に携われるところ
建設業界全体に共通する魅力ですが、自分が携わった建物が形として長く残ることは、大きなやりがいにつながります。積算担当者は現場に出ることは少ないものの、工事の初期段階を支える役割として、プロジェクト全体の成功に貢献しています。
完成した建物を見たとき、「この工事に関わった」という実感を得られることは、積算業務のモチベーションの源となるでしょう。
積算業務に必要なスキル
積算業務を正確に行うためには、専門的なスキルが求められます。以下では、積算に直結する代表的なスキルを紹介します。
積算業務に興味がある方や、建設業界でキャリアアップを目指す方は、ぜひ事前に確認しておきましょう。
計算力
積算業務で特に求められるのが、正確な計算力です。たとえば内装では、部屋ごとの床面積や壁面積、外装では外壁や屋根の面積などをもとに、使用する材料の数量と単価を計算します。
さらに、壁紙の種類によって価格が異なるほか、下地材・金物などの副資材も含めて、全体の構成を把握したうえで連続的に計算を行う必要があります。そのため、数字に対する正確さと、根気強く計算し続ける力は積算業務に不可欠です。
豊富な知識
積算業務では、材料の種類・仕様・単価に関する知識だけでなく、設計図書や仕様書の読み解き、工法や施工手順への理解も重要です。たとえば、安価な材料を選べばコストは下がりますが、仕様の変更によって工期が延びたり、施工トラブルが発生するリスクもあります。
費用だけに目を向けるのではなく、建設全体の流れを理解したうえで判断する視点が求められます。つまり、設計から施工までの幅広い知識が、適切な積算の土台となるでしょう。
コミュニケーション能力
積算業務は、デスクワーク中心とはいえ、社内外とのやり取りが非常に多い仕事です。業者との単価交渉、資材に関する相談、図面の不明点について設計者に確認するなど、他職種との連携が欠かせません。
正確な情報を得てスムーズに業務を進めるためには、自ら積極的にコミュニケーションを取る姿勢が重要です。「話すことが少ない仕事」と思われがちな積算業務ですが、実は人との連携力も大切なスキルのひとつです。
積算業務に必要な資格は?建築積算士が役立つ
建築積算士とは、材料費や工事費の積算業務における、高度な技術を持つスペシャリストとして認められる資格です。この資格を取得すると年収アップが期待できるうえに、さらに条件のいい会社に転職しやすくなります。また、公共工事の入札基準の条件になっており、企業側にもメリットがあります。
建築積算士試験は、四肢択一式の一次試験、短文記述と実技試験が出題される二次試験に、それぞれ合格する必要があります。実技試験では鉄骨や躯体などの費用と内訳明細を作成するという実践的な内容です。
近年の合格率は50~60%を推移しており、難易度はそれほど高くないといえます。しかし、実技試験の積算は実務よりも計算の正確性を求められるため、難易度の高い試験といわれています。
まとめ
積算は建設業界独自の業務で、工事費用を算出する重要な役割を持ちます。予算を抑えながら利益を確保するため、材料の選定や計算、工事に必要な人件費の計算など、あらゆる側面で工事費用を算出します。
そのため、算出するための基礎知識はもちろん、設計図書を読み解くスキル、材料の知識、建設の工法や過程などの豊富な知識が必要です。積算業務は難しい仕事だからこそ、予算内で工事を終えること、地図に残る建物に携われることは、大きなやりがいとなるでしょう。
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