建設業の許可を申請するには、膨大な種類の書類を提出しなければなりません。工事経歴書は申請書類の一つで、工事実績をすべて記載する書類のことです。
工事経歴書は10を超える項目があるうえに、項目ごとに記載方法のルールが存在します。工事経歴書は建設業の許可以外でも提出する機会があるため、正しい書き方を覚えることが大切です。
本記事では、工事経歴書の全項目の概要や書き方のポイントについて解説します。併せて、工事経歴書のテンプレート(フォーマット)を無料でダウンロードする方法もまとめました。
工事履歴書のテンプレート(フォーマット)を無料でダウンロードし、スムーズに作成を進めたい方はぜひ参考にしてみてください。
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【無料】工事経歴書のテンプレート(フォーマット)をダウンロードする方法
工事経歴書のテンプレート(フォーマット)は、国土交通省の「建設業 経営事項審査について」から無料でダウンロードできます。下の図のとおり「工事経歴書(様式第2号)」の「▽ダウンロード」という文言をクリックすると、Excelでダウンロードできます。
工事経歴書とは?
工事経歴書とは、建設業の許可申請書類の一つで、完成工事、未完成工事を含めた、すべての工事実績を記入する書類のことです。工事経歴書は許可申請を行なう業種ごとに作成する必要があり、さらに毎年提出する決算変更届でも必要な書類になります。
工事経歴書は申請書類のなかでも重要な書類のため、記載のルールが細かく決められています。作成する機会が多々あるため、書き方を正しく把握することが大切です。
工事経歴書の項目と書き方のポイント
工事経歴書にある項目と、書き方のポイントを見ていきましょう。
工事経歴書の基本的な書き方
工事経歴書には、申請・届け出を行なう日の属する事業年度の前年1年間に着工した完成工事、および前年度末時点の未完工事の実績を記載します。例えば、事業年度が4月1日~3月31日の場合、31日までに完成した工事と未完成の工事をそれぞれ記載します。
実績を記載する際、請負代金の額の大きい順から記載することが一般的です。ただし、工事経歴書は都道府県ごとに書式が異なるため、しっかり確認してから記載しましょう。
なお、法人の新設など、工事実績がない場合でも工事経歴書の提出が必要です。実績がない場合、「工事実績なし」と記載した工事経歴書を提出します。
次に、工事経歴書にある各項目と書き方を紹介します。
【工事経歴書の項目】工事種類
先に述べたように、工事経歴書は工事の種類ごとに作成が必要です。「建設工事の種類」という項目では、工事種類の名称を記入します。
【工事経歴書の項目】税込・税抜
経営事項審査を申請する場合、工事経歴書の請負代金は「税抜」に○をします。一方、審査を受けない場合は、税抜・税込のどちらでも構いません。ただし、申請する全業種で、税抜・税込のどちらかに統一して記載する必要があります。
経営事項審査とは、国や地方自治体の公共工事を請け負う際に必要な審査のことです。公共工事は競争入札で業者を決めるため、発注機関は入札に参加する業者に対し経営事項審査を実施する必要があります。
【工事経歴書の項目】注文者
注文者の項目では、工事を発注した法人などの情報を記載します。
法人の場合は法人名をそのまま記載しますが、発注者が個人の場合は対応が異なります。個人情報保護により個人名が特定されないよう、「個人A」といったイニシャルを用いることが一般的です。
【工事経歴書の項目】工事名・工事現場の所在地
工事名・工事現場の所在地の項目では、注文書や契約書に書かれた工事名をそのまま記載します。戸建て住宅など、工事名に個人名が入る場合、注文者と同様にイニシャルで記載しましょう。
さらに、工事現場の所在地である、都道府県と市区町村の名称も続けて記載します。
【工事経歴書の項目】元請・下請
元請・下請の項目には、発注者から直接受注した場合は元請、それ以外は下請と記載します。なお、民間の建設工事、公共事業を分けて記入する必要はありません。
【工事経歴書の項目】配置技術者
配置技術者の項目では、建設現場に配置した主任技術者や監理技術者の氏名を記載します。氏名欄の横にある「主任技術者または監理技術者の別」では、該当する方に「レ印」を記入します。
新規許可申請の場合は、技術者名の記載がなくても問題ありません。ただし、許可取得後の決算変更届で工事経歴書を提出する場合は、記述者名を必ず記載しましょう。
【工事経歴書の項目】JV
JVとは共同企業体のことで、複数の企業で1つの建設工事を受注する方法です。JVを組織して実施した工事の場合、所定の欄に「JV」と記載します。
【工事経歴書の項目】請負代金の額
請負代金の額の項目では、契約書などの書類をもとに、1,000円単位で請負代金の額を記載します。1,000円未満は切り捨てて記載して構いません。なお、契約変更があった場合は、変更後の額を記載しましょう。
JVの場合、企業全体の請負代金の額に対し出資の割合を乗じた額、または分担した工事額を記載しましょう。ただし、工事の進捗状況で費用や収益を計上する、工事進行基準を採用している場合もあります。工事進行基準は請負代金と完成工事高が変わることがあるため、完成工事高を括弧書きで追記しましょう。
なお、PC、法面処理、鋼橋上部の工事が含まれる場合、請負代金を別途記載します。
【工事経歴書の項目】工期
工期の項目には、着工年月、完成年月または完成予定年月を記入します。
【工事経歴書の項目】小計
小計の項目では、記載した完成工事の件数、請負代金の合計をページごとに記載します。また、請負金額の合計のうち、元請工事の請負金額も記載しましょう。
【工事経歴書の項目】合計
最終ページにある合計欄では、全ページの請負代金の合計額を記載します。ただし、合計の数字は工事経歴書に書かれた内容の合計ではなく、直前決算期における工事種類ごとの工事件数と請負代金の合計です。
それぞれの合計が、「直前3年の各事業年度における工事施工金額」と一致するかどうか確認が必要です。
まとめ
工事経歴書は建設業の許可、毎年の決済変更届を提出する際の重要な書類です。公共事業の入札に参加する際に必要な経営事項審査を申請する場合、必ず税抜で記載しましょう。
請負金額は金額が大きい順から記載しますが、都道府県で書式が異なります。JVで施工した場合は、請負金額の記載に注意が必要です。
工事経歴書は作成する機会が多いため、各項目の書き方をしっかり覚えましょう。