新型コロナウイルス感染症の感染拡大防止のため、オフィスからテレワークへと4が変わりつつあります。デスクワーク中心の業務でテレワークの導入が進む中、建設業界も同様の動きが見受けられます。事務作業が多い現場監督は、テレワークの導入でどう変わるのでしょうか?今回は、建設業界におけるテレワークの導入率、テレワークによる現場監督の業務効率化と課題について解説していきます。
■建設業界におけるテレワークの効果と導入率
総務省の平成30年の調査では、建設業界のテレワーク導入率は18.8%で、年々伸びている状況です。テレワークは新型コロナ対策に加え、建設業界が抱える課題の解決が期待されます。
慢性的な長時間労働や、週休2日制の導入遅れなど、建設業界はワークライフバランスの改善が必要な状況です。テレワークの導入で事務所に帰らず自宅で業務ができるうえに、時間の有効活用による生産性向上の効果も期待できます。工事現場の作業をテレワークにすることは不可能ですが、現場監督のデスクワークをテレワークにすることは可能です。
また、過酷な労働環境というイメージが根強い建設業界こそ、テレワークを取り入れるメリットがあります。働きやすい環境になることで社員の定着率が向上するうえに、時代に合わせた4を受け入れる柔軟な姿勢が会社のイメージアップにつながります。また、現場と事務所の移動が減ることで、ガソリン代や光熱費のコスト削減も期待できるでしょう。テレワークが可能な一部の業務に導入することで、建設業界全体のイメージが変わるかもしれません。
■テレワークで現場監督の業務は楽になる?
現場監督の業務でテレワークが可能な業務と、効率化できる内容を紹介します。
◇クラウドで情報を管理・共有できる
これまで紙やパソコンで保管していた図面や工程表、作業員名簿などを、クラウド上に管理することで、事務所に戻らなくても現場で確認ができるようになります。クラウドとはコンピューターの利用形態で、インターネット経由でパソコン内のソフトやデータを手持ちのタブレットやスマホなどで利用できるサービスのことです。
クラウドでデータを一元管理すると、協力会社と情報共有がしやすくなり、メールによる連絡の手間が省けます。また、図面や完成図書などの紙資料の電子化、データの管理システム構築をおこなうサービスも登場しています。図面をペーパーレス化すると、必要な図面をすぐに検索できるうえに、紙で保管する場所やコストの削減につながるでしょう。
◇工事写真の整理
従来の工事写真の撮影は、小黒板を記入してデジカメで撮影し、写真を手作業で管理する大変さがありました。建設業界のテレワーク化を推進するにあたり、工事写真の撮影に便利なアプリが登場しています。
小黒板に書いていた内容をスマホに入力してから写真を撮影すると、クラウド上で写真を自動で仕訳、整理できるというものです。クラウド上で写真を管理できるので写真を整理する手間が減り、現場監督の事務作業が軽減されるでしょう。
◇打ち合わせをオンライン化
建設業界は協力会社に外注する業務が多いことから、労働時間のうちで協力会社との打ち合わせに多くの時間を割いています。対面でおこなっていた打ち合わせを、テレワークによるオンライン化することが可能です。打ち合わせをオンライン化することで、会議の必要性を見直す機会になり、会議の回数を減らす効果も期待できるでしょう。
◇建設機械の遠隔操作
建設業界の4改革の1つとして、生産性の向上を目的としたi-constructionという取り組みを推進しています。i-constructionとは、人の手でおこなっていた業務を、ICTの活用による自動化・省人化を目指すものです。
この取り組みを受け、建設機械を手掛ける企業では、ショベルカーなどの建設機械の遠隔操作が開発されています。建設機械の操縦をリモート化することで、安全かつ快適に働ける作業環境の実現が期待されています。
建設機械の操縦は危険を伴ううえに、決められた工期を厳守するために長時間労働を招く環境にあります。人が操作するのと変わらない技術開発が進んでおり、建設現場の仕事はつらいというイメージは過去のものになるかもしれません。
■【建設業界・現場監督】テレワークの課題点
建設業界でテレワークを導入するうえでの課題点を紹介します。
◇IT環境の整備とノウハウの不足
テレワークで仕事をするには、自宅にインターネット回線やパソコンを準備する必要があります。しかし、一般的な家庭用のインターネット回線では、情報漏洩などのセキュリティ面で不安があるのも事実です。テレワークを導入、運用するためには、会社側がパソコン端末やソフト、サービスを支給し、かつセキュリティ面で安全な通信環境を提供しなければなりません。
テレワークの導入にかかるコストは、無料のソフトを使う、厚生労働省や経済産業省などがおこなう助成金や補助金を使うことで解決できます。ただし、ITやテレワークのノウハウが不足している中小企業の場合、「導入したくてもできない」という事情もあるようです。
◇連絡体制を整える難しさ
公共工事を発注する国土交通省や都道府県と、元請けの建設業との間で、連絡や指示がうまく伝わらない、連絡が取れないといった課題があります。テレワークで効率化できるはずが、連絡が取れないことで工事の進捗に悪影響を及ぼす可能性も指摘されています。建設業界でテレワークが定着するには、発注側と密な連絡体制を整えることが求められるでしょう。
■まとめ
新型コロナウイルスの感染拡大にともない、テレワークの導入が進んでいます。建設業界も例外ではなく、テレワークの導入率は年々上昇傾向にあります。
図面や写真などのデータをクラウド上で管理、打ち合わせのオンライン化など、激務といわれる現場監督の業務はテレワークで効率化されていくでしょう。
また、建設機械の遠隔操作が実現する頃には、建設業界の4も大きく変わることが期待されます。建設業界の4改革といえるテレワークですが、IT環境の設備やノウハウなどの課題があります。
コスト面は助成金や補助金でカバーできますが、ITのノウハウがない企業ではテレワークを運用するのは難しいかもしれません。しかし、テレワークは建設業界の労働環境をより良くする可能性を秘めているため、課題をいかに解決するかが重要といえるでしょう。