施工管理はさまざまな建設現場において、建造物の品質や予算、工事スケジュールなどを管理する業務です。施工管理の1つである安全管理は、危険と隣り合わせの建設現場で、作業員の安全を確保するという重要な任務があります。安全管理は職人ひとりひとりに目を配る必要があるため、さまざまな業務と安全管理を同時に遂行するための能力が求められます。今回は、施工管理における安全管理の必要性と業務内容、安全管理を行ううえで必要になる能力や資格について解説します。
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■施工管理の中の安全管理とは
施工管理における安全管理を含む4つの管理と、安全管理の必要性について見ていきましょう。
◇安全管理は施工管理の1つ
施工管理とは、「工程管理・原価管理・品質管理・安全管理」という4大管理の総称です。
・工程管理
決められた工期までに建物を完成させるため、工程ごとの日程や全体のスケジュール管理を行います。予定通りに工事を進めること、遅れた場合の調整も工程管理には欠かせません。
・原価管理
人件費や資材、機械などの原価を計算し、利益を確保する重要な業務です。コストダウンを要求される場面が多いため、過不足のない人員配置や建設機械のレンタル費用の検討など、現場の進捗状況に応じて見極めることが求められます。
・品質管理
設計書や仕様書通りに工事を進め、建物の品質を確保する業務です。工程ごとに品質を証明するための写真撮影や、設計書通りの作業ができているかを確認します。
・安全管理
文字通り、建設現場において安全な作業環境を整えることです。事故が起こることを想定した安全対策、季節や天候による危険性など、常に状況が変化する建設現場で危険を排除することが求められます。
◇なぜ安全管理は必要なのか?
安全管理が必要なのは、安全が確保された環境でなければ、工事そのものを進められず、そのような環境の場合では事故が起きる可能性があるためです。
建設現場では高所作業や建設機械を扱う危険性の高い業務を行うため、ケガや死亡事故が起きる可能性があります。建設工事は無事故で終えることを最優先するため、施工管理の中で一番重要な業務といっても過言ではありません。
■安全管理の具体的な業務内容
建設現場の危険性を排除する安全管理は、以下のような安全対策を行うのが主な業務です。
・機材点検…使用する機器や機材の安全点検
・工法の確認…決められた工法を守っているかを確認
・作業員の健康チェック…疲労や体調不良などで起こり得る、ヒューマンエラーの予防
・危険予知運動…作業開始前に、作業中の危険性を想定し、職人が事故を起こさないための対策を考え事故防止に努める
・5S…「整理・整頓・清掃・清潔・躾(しつけ)」で現場をきれいに整えることで、転倒の予防や生産性の向上につなげる
・ヒヤリハット事例の共有…ヒヤリハットを体験した報告をもとに、事例の周知と改善策を立てる
また、建設現場で発生しやすい事故は、大型建設機械の取扱事故、クレーンからの重量物落下、足場からの転落事故など多岐にわたります。これらの事故を未然に防ぐため、建設業界では安全管理において以下のルールを定めています。
・上下作業の禁止…落下物による事故の危険性が高いため
・吊り荷の下の人払い…吊り荷の落下事故を防ぐ
・高所作業時の安全帯の使用…足場などから転落した場合の命綱
施工管理者の立場になった場合、これらの安全管理を全員に周知徹底することが大切です。危険な作業をしていないかを巡回してチェックする、危険な箇所に看板を設置する、炎天下の作業では水分補給を促すなど、事故を未然に防ぐことが安全管理の重要な任務となります。
■安全管理の仕事に必要な能力や資格
建設現場の事故を防ぐ安全管理を行うために、求められる能力や必要な資格について紹介します。
◇安全管理に必要なのは「コミュニケーション能力」
事故と隣り合わせの建設現場では、職人とのコミュニケーションが事故防止につながる重要な要素です。
職人同士の人間関係がうまくいかない場合、トラブルが起こったり職場の雰囲気が悪くなったりすることがあります。間に入ってコミュニケーションを図り、仲裁をすることも安全管理と事故防止につながります。
また、体調がすぐれない職人や、作業が思うように進まない職人に声をかけるなど、職人ひとりひとりに配慮すると、職人のモチベーション向上に役立ちます。現場の雰囲気が悪いと事故やケアレスミスが発生する可能性が高くなるので、職人が安全、安心に働ける環境を作るため、コミュニケーション能力は安全管理に欠かせないのです。
また、安全管理は危険を予測する必要があるため、危機管理能力も安全管理に必要な能力です。「危険かもしれない」「危険だろう」という視点を持ち、危険な場所を見抜く能力は想定外の事故防止に役立ちます。
◇安全管理に必要な資格
安全管理を含めた施工管理は、施工管理技士という国家資格を取得する必要があります。施工管理技士の試験は、工事の種類によって以下の7種類に分類されます。
・建築施工管理技士
・土木施工管理技士
・電気工事施工管理技士
・管工事施工管理技士
・造園施工管理技士
・建設機械施工技士
・電気通信工事施工管理技士
各資格は1級と2級に分かれており、携わることができる工事の規模に違いがあります。
1級では、特定建築業と一般建設業の許可を得た建設業者に、配置する必要がある「監理技術者・専任の技術者」として認められます。特定建築業は、元請から4,000万円以上(建築一式工事は6,000万円以上)の大規模な工事を下請するもの、一般建設業は500万円未満(建築一式工事は1,500万円未満)の中規模工事です。1級は2級よりも大きい現場に携われる分、実務経験がないと受験できません。
一方、2級は建設現場に配置する「主任技術者」、一般建設業の「専任の技術者」と認められます。試験は学科試験と実地試験に分かれており、2級の学科試験は実務経験がなくても受験可能です。実務経験を積めば実地試験の受験資格が得られるので、これから施工管理に携わりたい方は、2級の取得を目指すことからはじめましょう。
■まとめ
施工管理の1つである安全管理は、危険と隣り合わせの建設現場で事故を防ぐ対策を行います。建造物は完成さえすればいいということではなく、重大な事故を起こさないことが優先されます。そのため、安全管理は施工の中でも、もっとも重要な位置付けです。
安全管理に携わるうえで、職人とのコミュニケーションが事故防止につながります。職人とコミュニケーションを取りながら、人間関係の問題を解決したり、職人のモチベーションを上げたりと、全員で一丸となって現場をまとめることが大切です。また、施工管理技士は2級から受験できるので、まずは学科試験の合格を目指して勉強することをおすすめします。