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工事請負契約書とは?目的や記載次項・注意点などを徹底解説!

更新:2024-05-29

工事請負契約書とは?目的や記載次項・注意点などを徹底解説!

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建設工事を発注したり受注したりする場合、どのような工事でも「工事請負契約書」を交わす必要があります。契約書で工事の内容や工期などについて明確にしておくことで、その後のトラブルを回避することができるからです。また、工事請負契約書を交わさずに工事を行うと行政処分の対象になります。

今回は、工事請負契約書の基礎知識を踏まえ、工事請負契約書の目的や書面で定めるべき条項、工事請負契約書締結の際の注意点について解説するほか、工事請負契約書の無料テンプレートもご紹介します。

工事請負契約書とは

工事請負契約書とは、建設工事の受発注の際に交わす契約書のことです。発注者は工事内容を定めて完成後には対価を支払うことを約束し、受注者は建物を建てて発注者に引き渡すことを約束します。その約束を書面にして取り交わすのが工事請負契約書です。

建設業法第18条、19条では、請負契約の原則が以下のように定められています。

18条:建設工事の請負契約の当事者は、各々の対等な立場における合意に基いて公正な契約を締結し、信義に従って誠実にこれを履行しなければならない

19条:契約の締結に際して次に掲げる事項を書面に記載し、署名又は記名押印をして相互に交付しなければならない

引用:建設業法 第18条、19条

なお、一定の要件を満たせば、書面契約に代えて、電子契約による締結も認められています(建設業法19条3項)。

工事請負契約書を締結するのはどんな場面?

工事請負契約を締結するのは、住宅や店舗用物件、ビルなどの建物に関する工事を行う場面です。新築工事、増改築工事、内装や外周部を改装整備する工事など、工事の受発注が行われる際には、工事請負契約書を取り交わします。工事の規模に関わらず、すべての工事で契約を締結し、契約内容を契約書にする必要があります。

◇工事請負契約書を作成しなかった場合の罰則

前述した建設業法第19条にあるように建設工事の受発注の際には、工事内容や工期、代金などについて書面に記載し、署名または記名押印をして相互に交付することが義務付けられています。

工事請負契約書を作成しなかった場合、建設業法違反として行政処分を受けます。

具体的には、国土交通大臣または都道府県知事の指示を受ける場合があり(同法28条1 項)、指示に従わない場合は営業停止処分を受けることもあるほか(同条3項)、情状が重い場合には建設業の許可を取り消される可能性もあります(同法29条1項8号)。

行政処分を受けると、建設業者の商号や違反の内容などが公表されるため、対外的な評判に影響が出る可能性もあります。

建設工事標準請負契約約款とは

国土交通省に設置された中央建設業審議会では、契約書の見本として「建設工事標準請負契約約款」を制定し、公表しています。

これは建設工事の内容や材料費、工期など、契約書で定めるべき事項を具体的に示した“モデル契約書”です。公共工事用と民間工事用が用意されており、建設業界では広く活用されています。

なお、建設業法34条2項では中央建設業審議会に対して、約款で示された内容を履行するよう企業に勧告する権限を与えています。工事契約を結ぶ際には約款に目を通し、契約内容に不備がないか確認するようにしましょう。

工事請負契約書を締結する主な目的とは?

次に工事請負契約書を書面で締結する理由を改めて整理しましょう。

1:トラブルの予防

工事請負契約書には、双方の認識の違いなどでトラブルが生じるのを防ぐ目的があります。たとえば工事内容や代金を支払うタイミング、変更が出た場合の費用の扱いなどが不明確であると、工事が終わっても支払いがなされない、あるいは受注者に当初予定していなかった費用負担が発生するなどのトラブルが生じます。

このような受注者に不利な契約やトラブル発生を防ぐことが、契約書の大きな目的の1つです。

2:トラブル発生時のルール決定

事前にさまざまな取り決めをしておいたとしても、後日トラブルに発展する場合もあります。こうした事態にスムーズに対応するため、契約書ではトラブル発生時のルールや解決方法も決めておくことが求められます。

具体的には、契約不適合責任の期間や損害賠償責任の発生要件、損害賠償の上限額、契約解除する際の要件や手続方法、訴訟を提起する裁判所についての合意(合意管轄)などといった事項を決めておきます。

3:訴訟などに発展した場合の証拠資料

工事請負契約書には、万が一訴訟などに発展した場合の証拠資料としての役割もあります。

建設工事は金額が大きいうえに工期が長く、発注者と受注者の状況認識にズレが生じることもあります。たとえば受注者にとってはやむを得ない追加工事であっても、発注者が受け入れずに支払いを拒否し、訴訟に発展することも考えられます。

建築請負契約書がきちんと作成されていれば、訴訟は契約の内容に沿って行われるため、紛争の早期解決につながりやすくなるでしょう。

工事請負契約書に定めるべき条項(法定記載事項)

工事請負契約書にはさまざまな事項を盛り込む必要がありますが、法律で定められている項目を「法廷記載事項」といいます。ここでは法廷記載事項とその内容について説明します。

◇工事請負契約書の記載事項

1. 工事内容

2. 請負代金の額

3. 工事着手の時期及び工事完成の時期

4. 工事を施工しない日又は時間帯の定めをするときは、その内容

5. 請負代金の全部又は一部の前金払又は出来形部分に対する支払の定めをするときは、その支払の時期及び方法

6. 当事者の一方から設計変更又は工事着手の延期若しくは工事の全部若しくは一部の中止の申出があった場合における工期の変更、請負代金の額の変更又は損害の負担及びそれらの額の算定方法に関する定め

7. 天災その他不可抗力による工期の変更又は損害の負担及びその額の算定方法に関する定め

8. 価格等(物価統制令(昭和二十一年勅令第百十八号)第二条に規定する価格等をいう。)の変動若しくは変更に基づく請負代金の額又は工事内容の変更

9. 工事の施工により第三者が損害を受けた場合における賠償金の負担に関する定め

10. 注文者が工事に使用する資材を提供し、又は建設機械その他の機械を貸与するときは、その内容及び方法に関する定め

11. 注文者が工事の全部又は一部の完成を確認するための検査の時期及び方法並びに引渡しの時期

12. 工事完成後における請負代金の支払の時期及び方法

13. 工事の目的物が種類又は品質に関して契約の内容に適合しない場合におけるその不適合を担保すべき責任又は当該責任の履行に関して講ずべき保証保険契約の締結その他の措置に関する定めをするときは、その内容

14. 各当事者の履行の遅滞その他債務の不履行の場合における遅延利息、違約金その他の損害金

15. 契約に関する紛争の解決方法

16. その他国土交通省令で定める事項

工事請負契約書を締結する際の注意点とは?

工事請負契約書に関する、重要な注意点を紹介します。行政処分になるケースもあるので、工事を受注する際は特に注意が必要です。

◇注意点1:建設業の許可がなくても作成が必須

工事請負契約書は「建設業の許可を受けている業者だけが作成する」と誤解されているケースも少なくありませんが、建設業許可の有無、元請、下請、公共、民間、工事の規模を問わず、すべての工事で工事請負契約書の作成が必須です。建設業法で定めている29種類の工事でも、建設業法上では建設工事とみなされるので注意しましょう。

◇注意点2:工事請負契約書を作成しないと行政処分の対象に

契約書を交わさない「口約束」でも契約は成立しますが、すでに解説した通り、建設工事の受発注の際には、工事請負契約書を交わすことが建設業法で義務づけられています。工事請負契約書を作成しなかった場合には、建設業法第19条の違反に対する行政処分が下されます。情状が重い場合、建設業許可の取り消し処分になる可能性もあるので、工事請負契約書の作成は必ず行ないましょう。

◇注意点3:現場代理人について発注者への通知が必要

建設工事を行う場合、工事現場に現場代理人(実際の工事を管理する担当者)を置くのが一般的です。工事を開始する前に、受注者は現場代理人の権限に関する事項と、発注者が現場代理員の行為について受注者に意見を申し出る際の方法について、書面で発注者に通知することが義務として建築業法で定められています(建設業法19条の2第1項)。

これらの現場代理人に関する事項は、工事請負契約書にまとめて規定しておくようにしましょう。

◇注意点4:請負代金が原価割れしない金額か要確認

請負代金に関して、発注者が受注者に対して取引上の優越的地位を不当に利用し、建設工事の施工に通常必要と認められる原価に満たない請負金額を定めてはならないといった規定が建築業法に定められています(建設業法19条の3)。工事請負契約書を締結する際には、原価割れが発生するような請負代金での契約となっていないか、工事請負契約書の書面に注意しましょう。

◇注意点5:工期の定め方が不適切でないか注意

工事請負契約書を締結する際、工期を定める場合には、発注者は注文した建設工事を施工するために通常必要と認められる期間に対し、著しく短い工期を設定してはならないと建築業法で定められています(建設業法19条の5)。

請負代金と同様、不適切な工期の設定はゼネコンなどの親事業者と下請事業者の間の工事請負契約において発生する場合があるため注意が必要です。

◇注意点6:請負代金の見積りは内訳を明らかに

工事請負契約書内で請負代金の見積りを行う場合、工事の種別ごとに材料費や労務費といった経費の内訳を明らかにすることと、工事の工程ごとの作業とその準備に必要な日数を明らかにすることが定められています(建設業法20条)。

特に、建売住宅や注文住宅の工事の場合は、個人が発注者となることが多いので、発注者が建設工事やその代金に詳しくない場合も少なくありません。そのため、見積もりの作成がおろそかになってしまう場合も。受注者は顧客の利益のためにも、詳細な見積りを提示する必要があります。

◇注意点7:工事請負契約書は建設業の許可や経営事項審査にとっても重要

建設工事を行う際のトラブルを回避するために重要な工事請負契約書ですが、建設業の許可を新規で取得する場合にも重要な書類となります。工事請負契約書が専任技術者としての証明になるので、受注者となる建設業者にとっても作成しておくべき書類なのです。

また、建設業の許可を取得している建設業者にとっても、経営業務の管理責任者や専任技術者を変更する際に、工事請負契約書や注文書の確認が求められる場合があります。さらに、公共工事の経営事項審査を受ける場合、工事の実態調査として工事請負契約書をチェックされるため、内容に不備のない工事請負契約書を作成するように日頃から注意しましょう。

工事請負契約書に貼付すべき収入印紙について

工事請負契約書は課税文書であり、印紙を貼付する必要があります。工事請負契約書に貼付すべき印紙税額は契約金額によって定められおり、以下の金額の収入印紙の貼付が必要となっています。

・契約金額が1万円未満:非課税(印紙不要)

・契約金額が1万円以上100万円以下:200円

・契約金額が100万円を超え200万円以下:400円

・契約金額が200万円を超え300万円以下:1,000円

・契約金額が300万円を超え500万円以下:2,000円

・契約金額が500万円を超え1,000万円以下:1万円

・契約金額が1,000万円を超え5,000万円以下:2万円

・契約金額が5,000万円を超え1億円以下:6万円

・契約金額が1億円を超え5億円以下:10万円

・契約金額が5億円を超え10億円以下:20万円

・契約金額が10億円を超え50億円以下:40万円

・契約金額が50億円を超えるもの:60万円

・契約金額の記載のないもの:200円

印紙を貼付したあとには、収入印紙を再度使えないようにするため、消印を必ず押します。

工事請負契約書に収入印紙を貼付していないと、税務調査の際に指摘を受ける可能性があります。その場合は貼付すべき印紙税額の3倍の過怠税が課されます。

また、契約書に収入印紙を貼っていても消印を押していないと、印紙税額相当額の過怠税が課されるため、収入印紙の貼付と消印の押印は絶対に忘れないようにしましょう。

まとめ

工事請負契約書は、基本的にはすべての建設工事の受発注時に交わす契約書のことです。発注者と受注者が対等で、受注者が一方的に不利にならない契約を締結する必要があります。また、工期や支払い期日、追加工事などの詳細を明確にすることで、後々に起こり得るトラブルを回避することが可能です。

建設工事の受注で工事請負契約書を作成しない場合、建設業法19条の違反で行政処分を受けることになります。建設業の許可を得ていなくても工事請負契約書は必要となりますので注意が必要です。

この記事を書いた人

ベスキャリ建設 編集部

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